スポーツ医学とは

スポーツを医学的・科学的にサポートすることがその目的です。

スポーツ選手(スポーツをたしなむ方)で、お怪我した方やと年齢とともに膝が痛くなってきた方をよくみかけます。
スポーツ選手は小学生からプロまでさまざまですが、皆様同じように、怪我したときは早くスポーツに復帰したい一心です。
しかしながら、スポーツ選手が怪我したとき、病院にいくと安易にドクターストップをかけられ、ひどいときはスポーツをやめてしまえばよいと言われることも未だに耳にします。

スポーツドクターは選手の気持ちになり、いかに安全に確実にかつ早い復帰が可能かを常に考えています。
そのスポーツの種目を理解し、選手のレベルを把握し、選手のおかれている条件や時期によって、もっとも適切な治療方法を選択します。
さらに次の新たな怪我を生まないように予防も行います。

スポーツ医学の最も重要なことは、医療者がスポーツ選手の気持ちが理解できるかどうかが治療の根幹に関わります。

スポーツ医学の内訳

1.予防医学(メディカルチェック)

スポーツの障害や外傷を減少させるためには、メディカルチェックは重要です。プロスポーツにおいては、オフシーズンに始まりにはシーズン中に故障をしたり、気になっていたところを十分診察・検査・診断・治療を行い、他の部位にも故障がないかどうか、全身的にチェックします。

また、柔軟性や関節アライメントに加え、種目特異性のフォームや関節・筋腱の変化などをチェックしていきます。筋力評価も行う必要性があることがあります。

以上は整形外科的メディカルチェックであり、これだけでは不十分なこともあります。
内科的なメディカルチェックとしては、血液検査、血圧測定、心電図など内科医との連携で行うことも重要です。

2.現場でのサポート

医師や医療スタッフが試合などでの怪我やその予防にサポートをすることや、日頃の練習で動きのチェック、選手の癖などから、故障のしやすいフォームの矯正やシューズなどの道具のチェックと修正を行うことも重要な仕事です。

3.外傷・障害の治療

怪我や故障など、スポーツパフォーマンスの妨げになるようであれば、速やかに治療に入れるよう努力していきます。
また、大きな外傷や慢性的な改善しない障害に対しては、復帰のための手術治療を行う場合もあります。

4.メディカルおよびアスレチックリハビリテーション

手術治療を行った場合、最初は日常動作にも支障があり、十分な関節の動きも得られず、筋力低下も発生しますから、これらの回復を促すリハビリを物理療法(低周波、超音波、温熱、冷罨ほか)を組み合わせながら進めていきます。

回復が進んできたら、メディカルリハからアスレチックリハに変更し、スポーツへの復帰が可能な筋力、パフォーマンスの基礎トレーニングを組み込んで行きます。

5.栄養からのサポート

スポーツにおける栄養の位置付けは非常に重要です。炭水化物の摂取、タンパク質の摂取の量だけでなく、その種類やのタイミングも重要です。

タンパク質は多くのアミノ酸が結合したもので、そのアミノ酸は20種類あり、皮膚、毛髪、筋肉、内臓、血液など、体を構成しています。この20種のうち9種類は摂取する必要があります。アミノ酸をバランスよくとるためには、肉・ 魚・卵などの動物性タンパク質と豆などの植物性タンパク質の両方を摂取することが重要です。

アミノ酸については、スポーツ後の筋肉痛にアミノ酸サプリメントの摂取が勧められ、特に分枝鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)飲料で効果があることが報告されており、特にロイシンに効果が強いことが報告されています。
また、これらのアミノ酸が脳内神経伝達物質にも重要な役割を担っており、頭脳的スポーツパフォーマンスには栄養にも注意することが勧められます。

ご飯・パン・パスタやイモ類などの炭水化物は即効力があり、また活動の原動力ともなり、スポーツ時には最も重要なエネルギー源となります。
特に持久系の競技を行う際には十分な炭水化物が必要とされています。

脂質は炭水化物よりも高いエネルギーがあり、細胞膜などの体の構成成分としても重要な役割をもっています。
脂質は構成する脂肪酸によってその性質が違い、卵・乳・肉に多い飽和脂肪酸と魚や植物の油に多い不飽和脂肪酸などがあります。
不飽和脂肪酸の代表格のドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)は脳の細胞を強化し、機能を 高める働きがあると言われています。

ビタミンやミネラルは、微量ながら体を正常な状態に保つように機能して いる重要な栄養素です。
ビタミンは脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)と、水溶性ビタミン(ビタミンB群・C)があります。
ミネラルは、ナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄などが代表的です。
血液や骨の材料となり、筋肉の働きを調節するなど、重要な役割 を担っています。

ウエイトトレーニングなど筋肉を刺激するトレーニングを続けていくと、筋肉は傷ついては修復されることを繰り返しながら大きくなっていきます。
よい筋肉のためにもその材料となる、肉、魚、卵などのタンパク質が含まれるものをいつもより多くとり、ビタミンCとカルシウムも同時に摂取する必要があります。

持久力を高めるには長時間動くエネルギーが必要です。効率のよいエネルギー源である炭水化物をしっかりとります。
また、空腹時に注意力が散漫になるのは、脳にエネルギーが供給されなくなるので、集中力を保つためにも脳の唯一のエネルギー源になる炭水化物の摂取が勧められます。
トレーニングの前に、体にエネルギーを準備し、使った後は必ず補給することが大切です。

脳から筋肉に信号を伝えるのに重要な働きをする神経伝達物質はビタミンB群が関わり、その信号を伝えるために不可欠なのはカルシウムとマグネシウムです。
スピードトレーニングの前後には、ビタミンB群、カルシウム、マグネシウムを積極的にとりましょう。運動をしているときは、体は酸化しやすくなります。
酸化は体のダメージを与えますので、酸化のダメージを軽減するために、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化物質を充分にとりましょう。
また、発汗で失われやすい鉄や亜鉛も持久力、免疫力を維持するために心がけて摂取しましょう。
これらは食事で気をつける必要がありますが、難しい場合や確実に摂取していくためにはサプリメントを利用するのも一つの方法です。

RICE処置(けが直後の応急処置法)

RICE(ライス)とは、応急処置の基本です。

Rest (安静) : スポーツを中止し、安静にし、応急の固定。
Ice (冷却) : 氷で15分冷罨することを24~48時間で継続。
Compression (圧迫) : 出血・腫脹を防ぐために弾力包帯やテーピングなどで圧迫します。圧迫しすぎにも注意が必要。
Elevation (挙上) : 心臓より高い位置に挙げるために椅子、台、クッション、枕を利用してあげておく。

打撲や捻挫など、ほとんどの外傷に対応できる応急処置です。処置が早いほど腫脹は少なく回復が楽になるので、このRICE処置はとても有効な応急処置法といえます。
湿布は冷やす効果がなく、消炎鎮痛剤が皮膚から浸透していくことで、効果を発する外用剤です。
急性期には血管拡張作用が見られるため、湿布だけの単独使用はよくありません。

足関節捻挫=足関節靱帯損傷=足関節靱帯断裂

捻挫といって軽んじられやすいのがこの外傷です。
足首の捻挫は、足首の靱帯が何本か断裂しているので、非常に注意が必要です。
足首は外側に三本、前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯があります。
頻度としては、この順番に断裂しやすく、断裂が多いほど、痛みも強く、不安定性も出現しやすくなります。
さらに、内側の三角靱帯損傷が合併すれば、損傷程度はひどいと言えます。不安定性の程度を測定するのに、レントゲンで、ストレス撮影(無理に捻りを入れてX線写真を撮影する)を行い、左右で比較してその差が10度以上の場合、手術で縫合した方が良いともいわれています。
靱帯断裂はギプスや足首固定用サポーター(しっかりした物)でも、十分治癒します。
最近の研究ではギプス+サポーター治療vs手術(靱帯縫合術)で比較しても、6ヶ月すれば不安定性(ゆるみ)には差がないというデーターがあります。
しかしながら、保存療法(非手術治療)には不安定性が残存する方もいます。
スポーツ選手が不安定性が残存しないようにするには、手術治療の方が確実かもしれません。

保存療法

まず、RICEで腫脹を軽減、病院ではギプス(ギプスシーネ)で固定します。
ギプス期間は軽ければ3日間程度ですが、程度によっては1週間や2週間必要な場合もあります。その間は松葉杖も併用する必要があります。
ギプスがはずれれば、スポーツの種目に応じたサポーターを装着します。日常生活でも入浴以外では固定を続ける必要があります。
日常でのサポーター固定期間は程度によりますが、受傷後1ヶ月~1.5ヶ月必要です。運動時には受傷後2ヶ月~3ヶ月まで装着して行うことが推奨されます。
スポーツの開始は軽度の時は2週間から、中程度の場合3週間、重傷の場合5~6週間後から軽いジョギング程度から開始することになります。

手術

手術療法は急性期には1週間以内で断裂した靱帯どうしを縫合します。
断裂の仕方が根本から剥がれた場合、単純な縫合はできないので金属スクリューに糸のついたアンカーを使って縫合します。
1ヶ月以上、数ヶ月経過した場合、縫合術では十分改善できないことが多いので、別の腱を移植して靱帯再建することを行わねばなりません。

肉離れ(筋損傷)

肉離れとは、筋肉が離れていくという字ですが、必ずしも筋肉がちぎれてはなれてしまったわけではありません。
筋肉内部で筋肉の線維の一部やその筋線維束どうしの間の組織が損傷されることをいいます。
損傷の形態は、ランニングやジャンプなど急激に筋肉が収縮しようとしたときにおこることが多いといわれています。
場所はふとももの裏(大腿部後面)の内側の筋(半腱様筋)やふくらはぎ(下腿後面)の内側(腓腹筋内側頭)が多くなっています。

アキレス腱断裂

私の治療のポイント

(1) 入院は3日間(最短)
(2) 翌日から歩ける(荷重して)
(3) ギプスは使わない
(4) 1週間以降、杖は使用しない

病状・原因

アキレス腱断裂は、主にスポーツ活動で起こり30歳以降になると起こりやすいスポ-ツ外傷です。
私の経験では19歳~50歳過ぎまでありました。
原因としては、ジャンプ、ダッシュ、ターンなどの動作によってアキレス腱にすでに緊張のかかった状態で、急激に動こうと足で地面や床を蹴ろうとしたときに起こります。
また腱断裂は1/3がウォーミングアップの不足で発生しますが、2/3は受傷以前からずっとアキレス腱痛を感じており、腱の変性があったことが原因と考えられます。受傷時に患者はスポーツ中、アキレス腱に「ボールが当たった」「後ろから蹴られた」「棒で殴られた」と感じた後に、アキレス腱部に痛みを感じる例が多いようです。
歩行は足裏をつければ歩くことはできますが、つま先立ちはできません。

診断

断裂部を押すとへこみ、痛みがあります。
腹ばいになって膝をのばして下腿の中央をつかむと、正常では足首が足底に向かう運動が起こりますが、腱断裂があると足首の動きがおこりません(Thompson-Simmond squeeze test)。
以上の条件が整えば診断は確実ですが、場合によってはX線(軟線撮影)、超音波検査、MRIを用います。

治療

手術をする手術的治療と保存的治療(非手術療法)があります。
保存的治療では長期固定や免荷を必要とし、筋力や関節の可動域の回復が悪くなるので、現実問題としてお薦めできません。
アキレス腱断裂の手術的治療には、いろいろな方法が報告されています。
これら様々な方法はそれぞれ長所と短所がありますが、いずれにしても断裂したアキレス腱を縫合糸で繋ぎ合わせるため、この縫合部腱の癒合がすすみ、縫合部の強度が高くなるまでの一定期間は強い緊張をかけないようする必要があります。
手術方法とリハビリの工夫で、高い強度のアキレス腱縫合が可能になり、手術後翌日から体重をかけることができます。


  • アキレス腱の断裂した状態

  • しっかりと縫合された状態

  • 皮切は2-3cmと小さい

  • 創部は透明テープで覆い1週間そのままで

  • 抜糸後

後療法・リハビリ

術後のリハビリでは、早期歩行を行うことで、歩行能力低下、筋力低下、可動域制限、腱の負荷減少による強度低下を防ぐことが考えられます。
これにより他施設より早期の社会復帰を可能にしました。
スポーツ復帰への回復は他施設と同等です。
早期に歩行、ジョギングが行えるようになり、良好な成績を治めています。
表に手術後の具体的なプログラムを示します。


  • これをつければ、鬼に金棒!

  • 歩けちゃう。

術後プログラム

アキレス腱縫合術後のリハビリテーション [PDF:65KB]

術後1日目

ギプスシーネは術後翌日までしか使いません。
アキレス腱用サポーターを装着し、2本松葉杖で歩けます。

術後3~4日後

1本杖歩行となり、術後1週間でサポーターをつけていれば、杖は不要です。
入院も3~4日間くらいで大丈夫です。

1週間~10日間

抜糸。ギプスは巻きません。このことで、患者様にとって非常に楽な環境であり、風呂もサポーターを取って直接お湯を浴びることが出来ます。

10週

ジョギングが可能なります。

12週

テニス程度の軽い運動ができるようになります。

4~5ヶ月

スポーツの完全復帰ができます。

腱付着部炎・腱炎

くりかえされるスポーツの過度な同じ運動により腱と骨のつなぎ目で炎症をおこして、痛みや腫れがおこるのを腱付着部炎といいます。
例えばテニス肘(肘外顆炎)、ジャンパー膝(膝蓋腱付着部炎)などが多く見られます。
腱の周囲には滑膜という腱がこすれないようにする膜があるのですが、過度な運動が続いたりすると、その腱の周囲で炎症を起こし、腱も炎症を起こします。
例えば、膝の外側である腸脛靱帯炎やアキレス腱炎・周囲炎などがあげられます。いずれも、まずは安静と抗消炎鎮痛剤(外用剤や内服)が中心になります。
温熱療法、冷罨法やレーザーなどの物理療法も重要です。

野球肘・野球肩

野球は上肢(手、肘、肩)を使ってボールを投げる種目で、特に日本ではスポーツ人口が多く、障害者も必然に多い障害です。
野球肘は大人より子供(9歳くらい~高校生まで)に多く、成長期に発生しやすい障害です。
投球数(全力)が適正な範囲を超えて、くりかえされた場合、未発達な弱い骨や軟骨が剥がれてきたり、壊れてきたりします。
この場合まずは、投球中止が第一先決です。
そして、投球フォームの不適切さや下半身で投球する感覚などを訓練させ、投球数の適正化をはかり、徐々に投球数を増やします。
野球肩は子供には比較的少なく、中学・高校生以上が多い障害です。これには投球フォーム、体の使い方、過度な投げ込みなどが複雑にからみあっているため、怪我に状態を診断するだけでなく、その原因を発見し、修正することが必要になります。種々のメディカル&アスレチックリハビリテーションが必要です。
肩の手術にいたる例は少なく、10~20%であり、十分なリハビリで改善する(調整する)ことがほとんどです。

成長期スポーツ障害

成長期のスポーツ障害は、野球肘やオスグッド・シュラッター病に代表される、スポーツ強度や回数が適正な範囲を超えた場合、未発達な弱い骨や軟骨が剥がれてきたり、壊れてきたりします。肩、肘、腰椎、骨盤、膝、足などに発生します。
腰椎分離症は、中学・高校生に発生しやすい障害ですが、大人でスポーツをしない場合は大きな痛みを出すことが少ないため、発見されても、軽んじられることがあります。
しかしながら、スポーツ選手にとっては、レベルが高いほど、また腰の回旋することの多い種目やコンタクトスポーツの選手にとっては、致命的な痛みに発展する場合もあります。 治療の基本は早期発見・早期治療が基本です。適切なスポーツドクターにかかることが重要な近道です。

膝の捻挫

膝の捻挫つまり、膝を捻った場合、一番多いのは膝内側側副靱帯損傷(断裂)です。ほかには半月板損傷や、ひどい場合、関節内に出血があり、前十字靱帯損傷(断裂)後十字靱帯損傷(断裂)がみられることがあります。コンタクトスポーツの選手では、これらの複合靱帯損傷で外側側副靱帯損傷(断裂)外側支持機構損傷(断裂)をも合併することもあります。バスケットボール、サッカー、バレーボールでジャンプ着地や踏み込んでガクッとなった場合、前十字靱帯損傷が多く見られます。

このページの先頭へ