私は膝の専門家で前十字靭帯と人工膝関節の得意な整形外科医(スポーツドクター)です。

膝の靱帯損傷

後十字靱帯損傷

○ 転倒で硬いコンクリートなどに脛(すね)をぶつける
○ 事故で車のダッシュボードにぶつける
○ スポーツで強い力で脛に衝突する(人・地面)
が原因で膝の中の十字靱帯というバンドを断裂するけがです。
靱帯損傷とは、伸びることはなく、断裂して関節にゆるみをおこしてしまうことです。

症状

○ 慢性期では症状はないことが多い→問題なし(ゆるみが軽く、安定している)
○ 階段など膝が屈曲した状態で、不安定性がでる
○ 膝蓋骨(おさら)周辺に痛みが出る(膝蓋大腿関節の圧力が高まる:図の*のところ)

このように、お皿周辺に痛みがあり、改善しない場合、後十字靱帯が断裂し、膝に後方へのゆるみが出 ている可能性があるわけです。

治療

後十字靱帯損傷があっても、軽い場合周辺の組織と癒着してゆるみが軽く症状がはっきりでないので、この場合、治療の必要がありません。
これは前十字靱帯に比べ、靱帯が太いことと、後方で血流のよい場所に靱帯が位置するため、靱帯の修復が行われやすいのではないかと言われています。

しかしながら、断裂場所によっては自然修復が困難であることも多く、後方へのずれが必発していることもあります。

さらに他の靱帯との複合型の靱帯損傷が起こっている場合に不安定が出やすいと言われています。

後十字靱帯損傷+後外側支持機構損傷

後十字靱帯損傷+前十字靱帯損傷

後十字靱帯損傷+内側側副靱帯損傷 などの組み合わせがある。

この場合、後十字靱帯再建術と合併した靱帯再建術を同時に行って行く必要があります。


強い後十字靱帯損傷では、膝の前方部分が後方にへこんでおり、後方への不安定な症状が残存しています。

この場合、放置しておくと、変形性膝関節症が進行していくことが報告されています。

そこで後十字靱帯再建術を行い、治す必要があります。

(方法)

自分の腱をとって(採取して良い部分)、それを束ねて、両サイドに人工靱帯をつけ、膝の中に骨のトンネルをあけて、その中に作製した移植靱帯(移植腱)を挿入して設置して、くさび(ステープル)で固定します。

  • 断裂した後十字靱帯

  • 再建した後十字靱帯


この手術は非常に難しく、簡単でないため、専門家でないとできないことが現状です。

まして関節鏡視下で行うことは、難度のある手術です。

(リハビリ)

○ 歩行は2日目から可能で、1週間で杖なしで歩けます

○ 膝を曲げていくリハビリが必要です(2-3ヶ月かかります)

○ スポーツ復帰は6ヶ月以降です

○ 肉体労働は4ヶ月必要です

○ 膝の専用ハードサポーターが必要です

内側側副靱帯損傷

内側側副靱帯断裂はスポーツの膝靱帯損傷の中で比較的多い外傷です。

膝の下の脛が外側にねじられたときに発生します(受傷パターン図)。


内側側副靱帯は上の方が弱いのでそこで完全断裂もしくは部分断裂します。

内側側副靱帯には浅層superficial layerと深層deep layerが存在し、主に働いているのは浅層であるところです。深層はほとんど関節と一体化しているような状態です。まず怪我するのは浅層になります。

内側側副靱帯浅層の役割は、伸展および屈曲で緊張し、膝の安定性をはかる仕組みになっています。

損傷は程度によって、側副靱帯損傷の重症度は
1度 痛みのみで膝の左右への不安定性がない。
2度 痛みがあり、30度膝屈曲位で主に左右方向に不安定である。
3度 痛みが強く、30度屈曲位と完全伸展位で不安定である。

治療

1度や2度の場合は、保存療法(手術をしない)で治療できます。ギプス(なるべく使わない)やサポーターで固定して、6週?8週で癒合して自然治癒していきます。

2度で前十字靱帯や他の膝靱帯との複合損傷や3度以上の場合、再建が必要になります。

内側側副靱帯再建術は、自分の腱を採取して、これを束ねて解剖学的靱帯の位置に設置します(再建術の図)。

(リハビリ)

○ 翌々日より荷重歩行開始、1週間で全荷重歩行可能

○ 2-3ヶ月は、ハードサポーターが必要

○ スポーツ復帰は6ヶ月

後外側支持機構(外側側副靱帯・膝窩筋腱・膝窩腓骨靱帯)

後外側支持機構は、非常に聞き慣れない言葉です。これは主に膝の外側の安定性、外旋安定性に寄与している重要な靱帯です。 聞き慣れないくらいですから、一般整形外科医も十分に理解している医師も少ないのが現状です。そのため、診断も非常に難しいため、見逃されるケースもあると言われています。

単独損傷は少なく、他の靱帯損傷と合併しやすく、特に後十字靱帯損傷、次に前十字靱帯損傷、さらに膝関節の脱臼が起きた場合、神経血管損傷が危惧されるだけでなく、この靱帯が損傷されている可能性も高いのです。

後十字靱帯損傷との合併時に後外側支持機構再建をしないと、後十字靱帯再建術の成功率は下がると言われています。

外側支持機構再建術

☆ これらの複合した靱帯損傷についても、再建術が可能です。

☆ この場合一期的、二期的手術もケースバイケースで行います。

靱帯再建術を過去に受けた方

靱帯再損傷は、通常の靱帯損傷と異なり、手術法に十分な考慮が必要で、技術も必要です。

前回の手術による骨の穴(骨孔)は、通常一生残ったままとなるので、古い骨孔が、新しい骨孔を作成する邪魔になる場合が少なくありません。骨孔が元のものより、経過とともに(経年的に)、しだいに大きくなっている人もいます(骨孔拡大)

この場合次の手術をする場合、予想を上回る骨孔の大きさとなるため、大きくなった骨孔に対しいて、靱帯移植が細すぎる可能性があります。
それでは、安定した再建術ができません。

また、旧骨孔が少し位置がずれており、新しい骨孔に近接し、重なったりする危険性もあります。

これらの場合、手術(靱帯再建術)を先行して、骨の穴を埋めて、再建を容易にする『骨移植』をする必要があります。

骨移植は腸骨(骨盤)から、専用の器具で骨を採取して、膝に持って行きます。

3ヶ月以降、靱帯再建術を行います。

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