私は膝の専門家で前十字靭帯と人工膝関節の得意な整形外科医(スポーツドクター)です。

前十字靭帯損傷

膝前十字靱帯損傷はどんなときに起こるの?

スポーツ中の受傷が多いようです。例えば、スキー、バスケットボール、サッカー、バレーボールなどで、ジャンプの着地の際に膝を捻る動作(足のつま先の方向に対し膝の方向が内側に入る)やピボット動作で、靱帯が損傷されやすい傾向があります。

靱帯損傷と靱帯断裂では違うの?

差はありません。靱帯の損傷で『靱帯が伸びた』とよく言いますが、靱帯の線維は引っ張られても容易に切れないようになっています。
しかし、弾力性は少なく、線維はあまり伸びません。従って、強い外力で伸びたら切れる(断裂)しかないわけです。

前十字靭帯損傷(断裂)の症状は?

症状は、スポーツ中などに、膝がガクッ(膝くずれ)となったり、ずれた感じが起こり、受傷時に断裂音(ポップ音)が聞かれたり、感じられたりすることが多いようです。
しかし、2~3日で腫れや痛みのピークは減少し、2週間くらいで歩行は十分出来るようになり、1ヶ月くらいで日常生活の支障は少なくなります。
靱帯が悪くても痛みを感じることは少ない。不安定感が主な症状です。

前十字靭帯損傷(断裂)を放置しておいていいの?(治療しなくてもいいの?)

放置していると、靱帯の機能が働かないため、膝がガクッ(膝くずれ)となったりすることを繰り返すことが多いようです。
この症状はスポーツ復帰時や階段下降時に自覚します。膝くずれや不安定感が続くと内側半月板(関節のクッション)が擦り切れてきます。
それによって半月板損傷(断裂)が合併し、半月板を切除しなければならなくなることが多く、それに引き続き関節表面の軟骨が削れて行きます。
従って不安定感のある人は治療の必要があるわけです。

  • 滑らかな正常軟骨

  • 軟骨損傷の状態

前十字靱帯損傷があるかどうかどうしたらわかるの?

まずは整形外科受診を勧めます。特にスポーツ整形を専門としている病院がよりよいでしょう。
そこで、医師の診察(徒手検査:手で触って不安定性をみる)、骨折の合併がないかレントゲン写真、関節穿刺(関節内出血の有無をみる)、MRI(磁気共鳴画像)を行います。これらで診断がつきます。

  • MRI : 正常な前十字靭帯

  • MRI : 断裂した前十字靭帯

前十字靭帯再建術

前十字靱帯損傷はどうしたら治るの?

断裂した前十字靱帯は自然にはくっつきません。膝の内側靱帯や足首の靱帯は固定すれば自然にくっついて機能がもどることが多いのですが、前十字靱帯は関節内の靱帯のため無理なのです。
そこで、新たに靱帯をつくらなければなりません。
自分の取っても大丈夫な腱を使って、靱帯を模倣した移植腱を作製し、関節内に移植します。
7ヶ月でスポーツ復帰が可能です。

手術のために入院は必要なの?

必要です。最低1週間。2週間あれば十分でしょう。
早い人は1週間で杖なしで歩けますので、元気なひとなら学校や職場にデスクワークのみならもどれます。

手術はどのくらい時間かかるの?傷はどのくらいなの?

手術時間は1時間~1時間半くらいです。手術の傷は膝下内側に2~3cmのもの1コと内視鏡による傷(8mmくらい)が2~3コです。

靱帯再建術って具体的にどうするの?

まず、関節鏡で靱帯の断裂を最終確認します。断裂した残骸は削り取ります。
そしてすねの骨(脛骨)から膝関節内にトンネルを掘ります。
また、それに連続して関節内からふとももの骨(大腿骨)にトンネルを掘ります。
膝を深く曲げるときに使う腱(自家膝屈筋腱3~4mm:半腱様筋腱および薄筋腱)を採取し、これを折り曲げて束ねて太く(5~6mm)します。
その両端に人工靭帯で長くして、先に掘った骨トンネル内を通して、関節内に移植腱を設置して、大腿骨の外側をボタンでと脛骨の内側にくさび(ステープル)で固定します。

どこか再建手術が他の病院と違うの?

最近では前十字靱帯をもとの膝に近くなるように、以前は1本の太い靱帯を作っていましたが、少し細めの2本の移植靱帯を膝にいれることで、膝の状態がいろいろな面でよくなることがわかってきました。

自分の腱を採って大丈夫なの?

膝を曲げる腱ですが、主になる曲げる腱は外側にあります。
内側の腱は特に膝を深く曲げる時に使うものです。
この腱を採ったことで、スポーツプロ選手でも問題になるようなことはほとんどありません。
また、最近では腱の再生がなされることがわかっており、腱の機能がもどる人もいます。

リハビリにどれくらい通うの?

1ヶ月半~2ヶ月くらいは週2~3回通院が必要です。

どんなリハビリするの?

大きく分けて筋トレ、屈伸訓練(可動域訓練)、歩行訓練の3つです。
歩行訓練は術後2日目から開始します。筋トレは手術後すぐ始めます。屈伸訓練は徐々にゆっくりやります。
あまり早く進めすぎると膝の安定性に影響がでます。

リハビリに何か必要なの?

術後から軽い運動し始め、スポーツ復帰まで継続して使用する靱帯用ハード(硬性)サポーター(装具)が必要です。
これは、移植した腱を保護する役目に重要なアイテムです。

手術や入院費用ってどのくらい?

正確には記することはできませんが、自費で手術料約20万円、手術材料費約40万円、入院費+薬剤費その他(2週間)1日1万円×14(約14万円)で、約60万円~70万円くらいとなります。
これに保険診療として3割負担で20万円~30万円となります。
これはあくまでも試算なので、保険の種類や個々の状況で異なります。

最後に手術はいつでも出来るの?

当院の手術日として、決められた曜日に会えば1週間後にもできます。
『来院して明日にしてください』というのはさすがに無理でしょう。
また、十分に手術の執刀医と手術の相談を行い、十分納得して手術に向かうことが重要です。
手術は患者様と医師の信頼関係ができなければできません。手術をすることが決まれば最前を尽くします。

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