日常診療から・・アーカイブ
2011/03/08
後十字靱帯損傷は、自然に治るわけでない。
(図をクリックすると大きくなります)
【後十字靱帯損傷】
○転倒で硬いコンクリートなどに脛(すね)をぶつける
○事故で車のダッシュボードにぶつける
○スポーツで強い力で脛に衝突する(人・地面)
が原因で膝の中の十字靱帯というバンドを断裂するけがです。
靱帯損傷とは、伸びることはなく、断裂して関節にゆるみをおこしてしまうことです。
【症状】
○慢性期では症状はないことが多い→問題なし(ゆるみが軽く、安定している)
○階段など膝が屈曲した状態で、不安定性がでる
○膝蓋骨(おさら)周辺に痛みが出る(膝蓋大腿関節の圧力が高まる:図の*のところ)
このように、お皿周辺に痛みがあり、改善しない場合、後十字靱帯が断裂し、膝に後方へのゆるみが出ている可能性があるわけです。
【治療】
後十字靱帯損傷があっても、軽い場合周辺の組織と癒着したりしてゆるみが軽く症状がはっきりでない場合、治療の必要がありません。これは前十字靱帯に比べ、靱帯が太いことと、後方で血流のよい場所に靱帯が位置するため、靱帯の修復が行われやすいのではないかと言われています。
しかしながら、断裂場所によっては自然修復が困難であることも多く、後方へのずれが必発していることもあります。
さらに他の靱帯との複合型の靱帯損傷が起こっている場合に不安定が出やすいと言われています。
後十字靱帯損傷+後外側支持機構損傷
後十字靱帯損傷+前十字靱帯損傷
後十字靱帯損傷+内側側副靱帯損傷 などの組み合わせがある。
この場合、後十字靱帯再建術と合併した靱帯再建術を同時に行って行く必要があります。
しかしながら、強い後十字靱帯損傷では、膝の前方部分が後方にへこんでおり、後方への不安定な症状が残存しています。
この場合、放置しておくと、変形性膝関節症が進行していくことが報告されています。
そこで後十字靱帯再建術を行い、治す必要があります。
(方法) 自分の腱をとって(採取して良い部分)、それを束ねて、両サイドに人工靱帯をつけ、膝の中に骨のトンネルをあけて、その中に作製した移植靱帯(移植腱)を挿入して設置して、くさび(ステープル)で固定します。
断裂した後十字靱帯 再建した後十字靱帯
この手術は非常に難しく、簡単でないため、専門家でないとできないことが現状です。
まして関節鏡視下で行うことは、難度のある手術です。
(リハビリ) ○ 歩行は2日目から可能で、1週間で杖なしで歩けます
○ 膝を曲げていくリハビリが必要です(2-3ヶ月かかります)
○ スポーツ復帰は6ヶ月以降です
○ 肉体労働は4ヶ月必要です
○ 膝の専用ハードサポーターが必要です
2010/10/02
軟骨再生のための骨髄刺激法
正常の膝蓋大腿関節のシェーマである。灰色部分が軟骨である。
軟骨変性、断裂、摩耗などが起こり、表層がでこぼこ、ザラザラとなる。
これらの一度傷ついた軟骨は再生修復されないので、剥離・切除する。
その後、専用のアイスピックのようなマイクロフラクチャーオウルや鋼線(径1.2mm)でドリリングやMFを行う。
骨髄穿孔を行うと、骨に穴が開き、そこから出血がみられる。
骨髄内にある骨髄間葉系幹細胞が浸出、流出し表層をおおう。
ここに軟骨様組織がしだいに形成され、その組織で覆う。
これで軟骨組織が悪かったところが、再生されて改善したことになる。
関節水腫(関節水症)などが改善してくる。
2008/06/07
膝蓋骨脱臼と膝蓋骨亜脱臼症候群
おさら(お皿)がはずれる、おさら(お皿)がはずれそう、膝がぬける、膝がぬけた、などの経験はないでしょうか?膝の関節に時々、出血がでる、血がたまる などの症状はないでしょうか?
病気の原因:主に先天的な原因が多い
・若い女性で多い
・X脚のヒトがなりやすい
・脛骨粗面(膝蓋骨から5cmくらい下の突出したところ)が膝の中心より外にある
・大腿骨の膝蓋骨関節面の溝が浅い
症状:
・膝蓋骨が時々はずれる・・反復性膝蓋骨脱臼
・膝蓋骨の不安定感(はずれそうな感じ)・・・膝蓋骨亜脱臼症候群
・膝蓋骨周囲の痛み・だるさ・・・反復性膝蓋骨脱臼・膝蓋骨亜脱臼症候群
よく経験するのですが、私が膝の専門家だと聞いた方から、
『前から怪我がないのに冷えると膝周囲が痛かったり、だるかったりすることが多いですよねえ』
いつからかと聞くと、
『結構前から、あー10年以上前からですね』とか、長期にある人がいる。
これは膝蓋骨亜脱臼症候群に伴う膝蓋骨軟化症が原因と考えられる。
診断
・単純X線(レントゲン写真)で軸写(軸射)を30°60°90°の膝屈曲角度で撮影する
・CT撮影(関節の骨格上の不具合や骨折がよくわかる)
・MRI撮影(MPFL靭帯の断裂や軟骨の欠損がみつかる)
MPFL(内側膝蓋大腿靭帯)とLPFL(外側膝蓋大腿靭帯)がお皿(膝蓋骨)の横への脱臼が起こらないよう支えている重要な支持機構。
この写真の方は、17歳女子で膝周囲の漠然とした痛みが続き、数件の整形外科医を受診するも原因がわからなかったらしい。単純X線の通常の撮り方では、一 見普通に見えてしまう(図1)
しかしながら膝蓋骨軸射撮影では膝蓋骨が外側に亜脱臼しているのは一目瞭然である(図2)
治療
1)膝蓋骨脱臼
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・MPFL(内側膝蓋大腿靭帯)が断裂
・骨軟骨骨折を伴うことが多い
・先天的に脛骨粗面の外側偏位
・大腿関節溝が浅い
*保存療法:内側広筋訓練、パテラサポーター(図)←効果は多少あるけどもサポーターをいつまでつければいいのか?サポーターで治ってしまうわけではな い!脱臼や亜脱臼を予防する意味しかありません。残念ながらしっかり直すには手術しかないのが現状です。
2) 脛骨粗面内方移行術
脛骨粗面内方移行の皮切は従来12cm近くと大きかったが、今は下は3cm 上は2cmのちいさな皮切程度でOK。
女性の方で傷を気にされるようなら、この方法が奨められる。
膝蓋骨の外方偏位が改善され、関節面の適合も良くなっている(面と面が良く合っているよ)
(ア) Fulkerson osteotomy(1983年)←僕はこれを行っています。
(イ) Hauser法(1938年)・・・変形性膝関節症がおきやすい
(ウ) Elmslie-Trillat法(1964年) ・・・Fulkerson法の原法
4) 外側支帯解離術
5) 内側広筋前進術もしくは内側縫縮術←傷が大きい割に効果弱い。
急性期に縫縮術はあり得るかもしれないが根治治療とは言えない。
2008/03/29
アキレス腱断裂 〜早期復帰のための治療の工夫
【私の治療のポイント】
1)入院は3日間(最短)
2)翌日から歩ける(荷重して)
3)ギプスは使わない
4)1週間以降、杖は使用しない
【病状・原因】
アキレス腱断裂は、主にスポーツ活動で起こり30歳以降になると起こりやすいスポ-ツ外傷です。
私の経験では19歳〜50歳過ぎまでありました。
原因としては、ジャンプ、ダッシュ、ターンなどの動作によってアキレス腱にすでに緊張のかかった状態で、急激に動こうと足で地面や床を蹴ろうとしたときに起こります。
また腱断裂は1/3がウォーミングアップの不足で発生しますが、2/3は受傷以前からずっとアキレス腱痛を感じており、腱の変性があったことが原因と考えられます。受傷時に患者はスポーツ中、アキレス腱に「ボールが当たった」「後ろから蹴られた」「棒で殴られた」と感じた後に、アキレス腱部に痛みを感じる例が多いようです。歩行は足裏をつければ歩くことはできますが、つま先立ちはできません。
【診断】
断裂部を押すとへこみ、痛みがあります。
腹ばいになって膝をのばして下腿の中央をつかむと、正常では足首が足底に向かう運動が起こりますが、腱断裂があると足首の動きがおこりません(Thompson-Simmond squeeze test)。
以上の条件が整えば診断は確実ですが、場合によってはX線(軟線撮影)、超音波検査、MRIを用います。
【治療】
手術をする手術的治療と保存的治療(非手術療法)があります。
保存的治療では長期固定や免荷を必要とし、筋力や関節の可動域の回復が悪くなるので、現実問題としてお薦めできません。
アキレス腱断裂の手術的治療には、いろいろな方法が報告されています。
これら様々な方法はそれぞれ長所と短所がありますが、いずれにしても断裂したアキレス腱を縫合糸で繋ぎ合わせるため、この縫合部腱の癒合がすすみ、縫合部の強度が高くなるまでの一定期間は強い緊張をかけないようする必要があります。
手術方法とリハビリの工夫で、高い強度のアキレス腱縫合が可能になり、手術後翌日から体重をかけることができます。
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