私は膝の専門家で前十字靭帯と人工膝関節の得意な整形外科医(スポーツドクター)です。

スポーツドクターみやの日記

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2008/06/07

膝蓋骨脱臼と膝蓋骨亜脱臼症候群

おさら(お皿)がはずれる、おさら(お皿)がはずれそう、膝がぬける、膝がぬけた、などの経験はないでしょうか?膝の関節に時々、出血がでる、血がたまる などの症状はないでしょうか?

病気の原因:主に先天的な原因が多い
・若い女性で多い
・X脚のヒトがなりやすい
・脛骨粗面(膝蓋骨から5cmくらい下の突出したところ)が膝の中心より外にある
・大腿骨の膝蓋骨関節面の溝が浅い

症状:
・膝蓋骨が時々はずれる・・反復性膝蓋骨脱臼
・膝蓋骨の不安定感(はずれそうな感じ)・・・膝蓋骨亜脱臼症候群
・膝蓋骨周囲の痛み・だるさ・・・反復性膝蓋骨脱臼・膝蓋骨亜脱臼症候群

よく経験するのですが、私が膝の専門家だと聞いた方から、
『前から怪我がないのに冷えると膝周囲が痛かったり、だるかったりすることが多いですよねえ』
いつからかと聞くと、
『結構前から、あー10年以上前からですね』とか、長期にある人がいる。
これは膝蓋骨亜脱臼症候群に伴う膝蓋骨軟化症が原因と考えられる。

診断
・単純X線(レントゲン写真)で軸写(軸射)を30°60°90°の膝屈曲角度で撮影する
・CT撮影(関節の骨格上の不具合や骨折がよくわかる)
・MRI撮影(MPFL靭帯の断裂や軟骨の欠損がみつかる)

MPFL(内側膝蓋大腿靭帯)とLPFL(外側膝蓋大腿靭帯)がお皿(膝蓋骨)の横への脱臼が起こらないよう支えている重要な支持機構。

この写真の方は、17歳女子で膝周囲の漠然とした痛みが続き、数件の整形外科医を受診するも原因がわからなかったらしい。単純X線の通常の撮り方では、一 見普通に見えてしまう(図1)

しかしながら膝蓋骨軸射撮影では膝蓋骨が外側に亜脱臼しているのは一目瞭然である(図2)


(図1)


(図2)

治療
1)膝蓋骨脱臼

・MPFL(内側膝蓋大腿靭帯)が断裂
・骨軟骨骨折を伴うことが多い
・先天的に脛骨粗面の外側偏位
・大腿関節溝が浅い
*保存療法:内側広筋訓練、パテラサポーター(図)←効果は多少あるけどもサポーターをいつまでつければいいのか?サポーターで治ってしまうわけではな い!脱臼や亜脱臼を予防する意味しかありません。残念ながらしっかり直すには手術しかないのが現状です。

**手術
1) MPFL再建術

2) 脛骨粗面内方移行術

3) 脛骨粗面前内方移行術

脛骨粗面内方移行の皮切は従来12cm近くと大きかったが、今は下は3cm 上は2cmのちいさな皮切程度でOK。
女性の方で傷を気にされるようなら、この方法が奨められる。


膝蓋骨の外方偏位が改善され、関節面の適合も良くなっている(面と面が良く合っているよ)
(ア) Fulkerson osteotomy(1983年)←僕はこれを行っています。
(イ) Hauser法(1938年)・・・変形性膝関節症がおきやすい
(ウ) Elmslie-Trillat法(1964年) ・・・Fulkerson法の原法

4) 外側支帯解離術

5) 内側広筋前進術もしくは内側縫縮術←傷が大きい割に効果弱い。
急性期に縫縮術はあり得るかもしれないが根治治療とは言えない。

コメント(4)  | 日常診療から・・

コメント(4)

初めまして、興味深く読みました。私も膝蓋骨脱臼で今までは亜脱臼のため自然に治っていましたが、ついにひどく脱臼をしてしまい、45歳にして手術を受けることになりました。先日詳しく説明を聞いたところ
MPFL法だと思いますが、膝の皿に穴を開けるらしく、最悪、皿が割れることもあります。なんて言われて怖くてやめようかと思ってます。先生のこのページの「Fulkerson osteotomy」などや、17歳の女性の方の手術時も皿に穴を開けたのでしょうか? 皿に穴を開けるのが一般的なのでしょうか? 助けてください。

お返事します。
膝蓋骨亜脱臼の場合、実は手術はあまり必要内可能性もあるのですが、脱臼では特に反復性の場合は、手術が必要です。
MPFL再建術は、必ずしも骨孔をあける必要はありません。膝蓋骨表面の骨膜に縫いつける方法なんかもあります。骨孔を掘るのは膝蓋骨骨折の合併症があります。そこで、我々は、その危険性は減少させるために、通常されている方法より骨孔径を小さくしました。
17歳の女性は、脛骨粗面内方移動術(Fulkerson osteotomyなどを含む)を行い、これはお皿は触りませんので、骨孔はあけません。脛骨(すねの骨)の膝蓋腱がくっついているところ、つまり脛骨粗面を4-5cmにわたって骨切りして骨を一度はずして、ずらしてつけなおす。という方法です(ブログ図参照)皮切は2-3cmで行えます。これで過去10年以上前は対応できていた方法です。過去にはHauser法やE-T法が行われてきたのですが、変形性関節症が進みやすいと言う欠点が最近指摘されています。しかしながらFulkerson osteotomyはE-T法を改良した方法なのでその欠点を補っています。
脱臼する場合本来、骨形状が悪いので、まず元の形状を直す脛骨粗面内方移動術を行う方が重要なのです。もちろん脱臼時にMPFLも断裂しているので両方直す方が解剖学的には絶対的です。しかしながら、両方を行うのは侵襲が大きいので、どうしてもの場合にはしますが、どちらかで片方でいいかなというのが心情的にはあります。
45歳の年齢なら、脛骨粗面内方移行術の方がいいのではと個人的には思います。理由は骨が強くないからです。
参考になりましたでしょうか。

はじめまして。私は20年前に始めて膝を脱臼してそれから両膝数回ずつ繰り返してきましたが、その当時の先生に治療法は無いと言われて諦めていましたが去年、脱臼はしていませんが歩けない程の痛みで仕事にも行けず他院で内視鏡の手術をしました。病名は軟骨軟化症、亜脱臼、といくつか言われ軟骨がぼろぼろになっていました。最近また痛みが強く、骨を切ってボルトで留める手術を勧められています。いくつか病院へ行きましたがその手術以外に方法は無いと言われています。一歩も歩きたくない程の痛みが続いています。他に方法は無いでしょうか。
このサイトを見つけて先生に診てもらいたいと感じましたが私は福島に近い茨城なので遠すぎるので関東地方で先生の様に膝の専門医のご存知のDrがいらっしゃれば教えてください。お願いします。

先日MPFL再建術を受け現在入院中です。
図解の説明がとても理解し易く学ぶことができ、感謝しております。ありがとうございました。
家族・友人にも私の膝脱臼から現在に至るまでの説明をするのに図の一部をお借りしました。
あくまでも個人的なものですが、探してもなかなか一般向けの分かりやすいブログにヒットせずで・・・思わずメッセージさせていただきました。

今後の発展を期待しております。

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